雷雨’s blog

現実を書こう!

C-3PO夢小説/切甘

「どうしたんです?」
異国の地で言葉も分からない貴女は馴染めずにずっと独りで-
★独り善がり☆
金色に輝くドロイドは今日も忙しく働いていた。
相棒のR2-D2、そして新しく加わったBB-8と共に。
あまり速く歩けない足で行ったり来たりを繰り返す。
「R2!少しはお前も手伝ってくれ!」
R2が電子音で答えると、彼は激怒した。
「なんだって!?このポンコツ!」
喧嘩はいつもの事であり、周りはあまり気にしない。
寧ろ、楽しんでいるようである。
「分かった、分かった。一人でやるよ!」
沢山の書類を抱えると一枚一枚丁寧に在るべき場所に移していく。
ただ足下にいるBB-8に気がつかなかったのが彼に悪運を呼んだ。
手元の書類は全て宙を舞ってしまった。
尻餅をつき、思わず頭を抱える。
「BB-8!!どっどうして!あー!もー!最悪です。」
申し訳なさそうにC-3POを置いて、二体はさっさとその場を去った。
その場に残されたドロイドは天井を眺め、増えた仕事をどうしようかと必死に考えている。
すると、突然紙の動く音が静けさを破った。
誰かが書類を拾っているようだ。
C-3POは驚きながらもゆっくりと視線を真横に移した。
「あなたは...雷雨様?」
視線の先にいたのは最近レジスタンスに入った異国民であった。
『...』
彼女が話す言語は日本語だ。
いくつもの翻訳をこなすC-3POにとって何も難しいものでもなかった。
ただ、彼女は何も話そうとはしないのである。
「書類は私が拾いますので...」
自ら拾おうとするも、床には一枚も残っていなかった。
彼女から書類を受け取ると、礼を言う前に彼女は早足でどこかに行ってしまった。
一連の流れが早すぎてその場に立ち尽くしていると、ふと、足下に視線がいった。
光を反射して光る何かが落ちている。
拾い上げてみると、それは今は衰退した帝国軍の国章を模したペンダントであった。
『...ないっ!!』
首が軽くなり、ようやくペンダントが無くなった事に気づく。
どこで落としたのか検討もつかない。
彼女は焦って手当たり次第に探した。
あんな物が誰かの手に渡れば裏切り者として追放されかねない。
レイア姫が誤解を解いてくれるだろうが、冷たい視線は変わらないだろう。
今よりももっと居づらくなる。
先程のドロイドを手伝った事が彼女の頭を過った。
急いで戻ると、もうそこに彼の姿はない。
だが、ペンダントが落ちているであろう場所はもうここしかなかった。
机の下や椅子の下。
思い付く全ての場所を探すも、見つからない。
「まだ帝国軍、いや、ベイダー卿の事を気に病んでいる御様子。」
突然の背後からの声に彼女は振り返った。
C-3POの手にはペンダントが握られている。
何かを思い出したかのように彼女の首が痛んだ。
思わず首を押さえてしまう程の痛みだ。
「あなたのその力は確かに彼を救う事は出来ませんでした。」
金色の足が迷いなく進み二人の距離が詰まる。
少しの間、彼らはお互いの視線をぶつけた。
「しかし、あなたは手を尽くしました。それで十分ではないですか?」
彼女は俯き首を横に振る。
そして、手を出しペンダントを返すよう促した。
と同時に視界が一気に暗くなる。
C-3POに抱き締められた彼女は一瞬何が起こったのか分からなかった。
だが、状況を理解しても拒否することはなかった。
「もう独り善がりは止めて下さい。いいですね?」
答えはやはり小さな頷きだけだ。
そっと首にペンダントを戻すと、小さな音が彼に届いた。
後日、彼女は一人空を見上げていた。
出発の時を待ちながら。
そこへ一体のドロイドが近づいてきた。
「どうしたんです?」
その言葉に答えるように彼女はペンダントを握っていた手をそっと離すと、ドロイドに向き直る。
「大丈夫ですよ。皆がついています。私だってただの翻訳ドロイドではありませんよ。これでもルーク様方といろんな冒険を経験しておりまして、そしてそして」
お喋りドロイドと馬鹿にされる彼の話は止まらない。
そんな彼の横を何事もないかのように通っていく彼女は微笑んでいた。
すれ違い様にまた昨日の音が届く。
『ありがとう』
少しの間C-3POは固まり、我にかえってまた動き始めた。
「まっ待って下さいよー!ちょっと!雷雨様?!あっ、R2!!どこにいたんだ!探してたんだぞ!まったく!BB-8はどこだ?」
彼らの運命が交わるのはまた別のお話である。

  • May the Force be with you.-