雷雨’s blog

現実を書こう!

Pirates of the Caribbean: Dead Man's Chest/長編,原作沿い/Part1

「心など必要ない」
冷たい海のように男は心を閉ざした。


$Deep sea$


青い空、青い海。
日が昇り、沈んでいく。
何も変わらない日常が静かに遺体を蝕む。
その傍で泣きつかれた少女は海を見つめていた。
大切な存在を亡くした彼女が思うことはただ一つだけ。
『今、いくよ』
水面が遠ざかっていく中で彼女は笑みを浮かべた。


暗闇に写る男。
大きな帽子を被り、林檎をかじる。
手を伸ばせば銃声が響く。
男は胸から血を流し、その場に倒れた。
『・・・っ!?』
目を覚ませば、それが悪夢だったと気づかされる。
汗を大量に流していたようで床は濡れていた。
周りを見渡すも、ここがどこなのかさえ検討もつかない。
ただ、左右の小さな揺れは船を思い出させる。
「お目覚めかな?」
突然の声に驚きながら、少女は振り返った。
声の主と思われるその姿に言葉を喪う。
「あぁ、こんな怪物を見るのは初めてか?」
詰め寄る男の頭から爪先までを何度も確認するように凝視する。
どう見ても人間ではなかった。
鮹の頭に蟹手と蟹足。
身体中にフジツボまでついている。
『・・・あなたは誰?』
必死に震える声を抑えながら、言葉を絞り出した。
「ほぅ、俺を知らない奴がこの世にいるとはな」
男は少女の周りを歩きながら、嘗め回すように見ている。
真横で立ち止まると、右手の鮹足となった人差し指を伸ばす。
少女は恐怖で動くことも出来ず、ただその指を横目で見ていた。
髪をかきあげられる感覚に肩を魚籠つかせる。
「怖いか?死が目の前にあるというのは」
『しっ死?・・・私は死にきれなかったんだ・・・』
どこか遠くを見つめるような目に男は不敵な笑みを溢した。
「やはりな。死のうとしていたか・・・だが、何のためだ?」
『あなたには関係ない!』
強く言い切るものの、少女に余裕はない様子である。
「助けてやったのにか?」
『誰もあなたに助けてほしいなんて言ってない!勝手に助けただけでしょ!』
声を荒げ続ける彼女の前に林檎が差し出される。
「「食うか?」」


月明かり。
甲板に出た男の背中が見えた。
大きく淋しそうな背中はいつもそこにある。
振り返れば、骨を剥き出しにした姿。
それでも、つい手を伸ばしたくなるのだ。
「あぁ、感じるぞ・・・寒い」
『!!!?』
目を開ければ、そこは先程の空間である。
いつの間にかベッドで寝ていた。
最後の記憶を思い出そうにも思い出せない。
ふと、小さく響くオルゴールの音に気づく。
少し離れた所でパイプオルガンの前に座る男が確認出来る。
オルゴールの音に聴き入っているのか、こちらには気づかない。
涙を一つ流すと、それを鮹足で拭き取った。
「何を見ている!?」
視線に気づいたのか、怒りを露にし、こちらに振り向く。
『今、起きたところですが?』
「・・・減らず口を・・・」
少し固いベッドから降りると、冷気が裸足を包み込む。
一瞬身震いをするも、すぐに寒さに慣れた。
『先程のオルゴール・・・良い音色ですね』
「・・・」
男は少し驚いた顔を彼女に向ける。
視線が交じあうと、瞬時に目を伏せた。
「・・・お前は俺と似ているようだ」
少女は思わず頭を傾ける。
『どういうこと?』
男の顔の鮹足が首に絡み付く。
すぐ目の前に迫る男を少女は拒絶した。
だが、女の力が男を勝ることなどない。
「だから、教えてやる。お前が心に秘めたあの男への感情が無意味だということをな」
『あの男・・・?』
「あぁ、既に忘れたか・・・もう思い出せまい?お前はこの船の乗組員なのだからなぁ!!」
男は少女の左腕を強く引っ張った。
上に伸ばされた腕には鎖のような模様が描かれている。
『・・・何をしたの・・・?』
目を見開く彼女の姿に男は言い放った。
「お前にはこの船で向こう百年働いてもらう」
その言葉に足の力を失った彼女は男に支えられるように崩れ落ちる。
その時、彼女は思い出していた。
次々と大破する船と遺体も打ち上げられない乗組員の話を。
そして、毎回目撃される海賊船。
生き残りだと噂される一人の男は言いふらしていた。
"陸に上がれ、海に行ってはいけない。クラーケンに襲われたくなければ、デイヴィ・ジョーンズに囚われたくなければ"
『あなたがっ』
そこで気づかされる。
目の前のこの男が─
「ようこそ、我が船フライング・ダッチマン号へ!」
デイヴィ・ジョーンズなのだと。



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後書き!


いやぁ、最初はデイヴィ・ジョーンズの夢小説短編だったんですが、書き終わった後に、あぁ、これは長編いけるなと思いまして(笑)(゜д゜)。
初めての長編となります(笑)(゜д゜)。
上手くは書けないとは思いますが、精一杯書かせて頂きます!
ぜひ、読んだいただけたら幸いです!
あ、ちなみに夢小説の落ちといいますか、お相手様は・・・うーん、まだ。
いや?
うん、まぁ(笑)(゜д゜)。
お楽しみにっ!(デイヴィ・ジョーンズの短編仕様だったからといってデイヴィとは限らない)
これはデッドマンズチェストとワールドエンドの二作で構成される予定ですので、めっちゃ長くなりますね(笑)(゜д゜)。
長くなかった場合、長くねぇじゃんとか言わないでね?
ということで、更新は暇な時。
のんびりと、短編もあげながらってことになりますので、気長にお待ちください。


また、お知らせ!


ブログ更新を一時休止します。(上で長編やるって力強く言っておいてね(笑)(゜д゜))
11月11日(金)に一度更新の後、12月まで途絶えます。
ご了承ください。


アデュ!