蝉の声が鳴り響く前の少し涼しい風が吹く早朝。重厚なリュックの横でチリチリンと熊鈴が静かに音をたてた。息を吐けば、微かに白くそれらは消えていく。燈は目の前に広がる木々の青さに気圧されながらも、覚悟を決めたように「よし」と呟いた。ジャンパーの…

11P目出来ました。 ご笑納ください。 原作:AROT 漫画:雷雨(Raiu)

草履を擦るように走る足音が外から聞こえてくると、詠は少し微笑みながらも作業の手を休めなかった。 そんな彼女を他所に戸が力強く開いて、一人の少女が元気よく叫んだ。 「詠ちゃん！遊ぼう！」 詠は手に持った藁を編みながら、戸の方を一瞥する。 それを…

女は息を切らしながら森を駆け抜けていた。 後ろからは村人たちの声と足音。ちらと振り返れば松明の灯りかかすかに見える。血が滲んだ両足を気にすることなく、森を抜けると女は驚いたように立ち止まった。目の前には切り立つ崖。周りに迂回路は無く、戻ろう…

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