始まりは共に、終わりは独り。
限られた時を刻むことに意味を与えなければいけない。
たとえ、それが他者にとって無意味なことだろうとも。
◆ A heart that doesn't get age ◆
桜が静かに散っていく中で、何かを思い出していた。
それは儚い夢だったろうか。
それとも、酷い現実だったろうか。
「難しく考えすぎとちゃう?」
いつの間にか隣に座る平子隊長が自身の髪に乗った花びらを払い除ける。
「そないな顔しとったら、すぐに老けてまうで?」
『…なっ…失礼ですね。そんな顔ってどんな?』
怒ったように問うと、隊長は一瞬だけ目を丸くした。
「…ほら、こーんな感じや。眉間に皺寄せて…」
『ぷっ…ふっ』
隊長の真面目な変顔に、思わず笑みがこぼれる。
「笑てるけど、これ、お前を真似たんやで?」
『一言多い!』
さすがに一発だけ隊長の頭に拳骨を落とす。
痛そうに腫れた頭を擦りながら、隊長は微笑んだ。
『…なんですか…気色悪い』
「お前も十分失礼なこと言うとるで?…ま、元気そうで安心したわ」
不意に隊長の人差し指が私の口の端を持ち上げる。
「さっきみたいに、もっと笑い。その方が可愛え」
『…!?』
動揺を隠せない私を他所に隊長は意地悪く笑った。
「顔めっちゃ赤いやん。傑作や」
『…この…大馬鹿平子隊長!!!!!』
きっと、難しいことも、悲しいことも。
一人では無理でも、二人なら乗り越えられる。
そんな気がした。