雷雨’s blog

現実を書こう!

クィレル教授夢小説/切甘

ずっと一緒だと思っていた
●独りの傷●
男は少女の亡骸を抱き締めた。
月明かりに照らされた彼女の顔には涙の跡。
心臓を貫いた狼男の爪は主から離れ彼女に刺さったままである。
爪の主は首を魔法で吹き飛ばされ周辺に転がっていた。
多量の血は湖に流れだし、森はざわつく。
そんな中で男はただ泣いていた。
「どう..し...てっ!」
決して目を覚ますことのない彼女に顔を埋める。
徐々に消えていく体温を感じながら静かに呪文を唱えた。
"Vulnera Sanentur"
時間が戻ったように血や破れた服が直っていく。
爪が刺さったままの傷口だけを残して。
「...ごめんよ、雷雨」
亡骸が地面に置かれると月明かりは雲に隠れてしまった。
彼女を否定するように。
男はそっと彼女の頭を撫で、思い出に浸った。
暫くして杖を再び取り出し、彼女に向けた。
「ありがとう...雷雨」


その日、同時刻のホグワーツから見える禁断の森から小さな灯りと煙が上がっているのが見えたと学生等は証言しているという。


"Incendio"