雷雨’s blog

現実を書こう!

クリスマス記念夢小説/C3-PO/微甘

遠い遠い空の彼方で。
もう一つの物語があった。


★Another brilliant hope☆


情報屋。
そんな肩書きはとうの昔に廃れている。
今や情報など抜き出すだけでも一苦労。
生業にするには相当の技術が必要だった。
「雷雨!」
呼び止められ、億劫そうに振り向く。
「どこに行くつもりですか?」
『別に・・・』
そう答えれば、目の前のドロイドは首を傾げた。
「あなたは英語が分からないでしょう?勝手にどこかに行かれてはあなたが困るのですよ?」
ドロイドの言葉が突き刺さる。
英語が分からない。
それは、この世界では致命傷だった。
情報屋としての人生に終止符を打たせたのもそれが原因だ。
『・・・少し休むだけだよ』
「そうですね、あんなことがあった後では休まざるを得ませんね」
あんなことというのは、ハン・ソロの死である。
つい先程まで連絡を取っていた相手が亡くなったという事実は雷雨の心を締め付けた。
いや、彼女以上に苦しんだのは間接的に死亡連絡をされた妻であるレイア姫であろう。
そして、息子が親殺しというのは追い撃ちをかけた。
『もう少し・・・スムーズに事が運んでいればあんなことにはならなかったかもしれない。タイミングがズレていればね・・・』
「ご自分を責めてはいませんか?」
『・・・』
俯けばドロイドは顔を除きこんでくる。
それを避けると、ドロイドは続けた。
「もし、あなたが役に立とうというご意志があるならば、一つ頼みたいことがあります」


『勝手にこんなことしていいの?』
怪我を負い、植物状態のフィン。
彼のベッドの前で二人は確認し合う。
「ええ、勝手ではありません。これは姫の要望です。あなたの力を借りたい」
『でも、だいぶ昔に使って以来だから・・・出来るかどうか・・・』
「やってみなくては分かりません」
静かに雷雨は頷くと、フィンの頭に手を乗せた。
目を瞑り、意識を集中させる。
「何か見えますか?」
『・・・何も・・・そもそもこれは相手の意識が無ければ出来ない』
「それは100%ですか?」
少しの沈黙の後、雷雨は首を横に振った。
『でも、99%出来ないよ。もう諦めた方が良い』
「私でしたら、その1%に賭けます。あなたは先程から出来ない理由を簡単に作り上げています。出来る理由を考えてみたらどうですか?」
その言葉に彼女は怒りを覚える。
記憶がフラッシュバックし、嫌なものを見せた。
『皆・・・出来る出来るって言って、出来ないじゃん!結局出来ないなら、最初から出来ないって言えよ!!』
突然の怒号にもドロイドは動じない。
「あなたの過去は私も存じています」
『だったらっ!』
「だからこそです。あなたは出来ないものを出来るように変えるのです。彼らのようになってはいけません」
涙を抑えながら、歯をくいしばる。
その姿にドロイドは続けた。
「昔、デススターの設計図の情報を提供してくれた勇気ある者達がいました」
雷雨は肩を魚籠つかせるも、落ち着きを取り戻し、耳を傾ける。
「ジン・アーソ、キャプテン・カシアン・アンドールベイズ、ボーディ、チアルート、K-250・・・彼らの話はあなたも知っている筈です」
『・・・あぁ』
「彼らがどうやって設計図を入手することが出来たか、それは・・・」
ドロイドは雷雨の肩を掴み、正面を向かせた。
驚きつつも、彼女はドロイドの目を見つめる。
「信じたからです。出来ると信じたからですよ、雷雨」
彼女の目が見開かれる。
己の手に視線を移し、再びフィンの頭に置いた。


「雷雨、助かりました」
『・・・』
静かに星空を眺める雷雨に、ドロイドは近づいた。
隣で立つと同じく空を見上げる。
無数の星達が輝いていた。
「大切なのは・・・」
『信じること』
彼女は視線を外さずに答える。
『もし、消えていった仲間にもう一度会えたとしても、もう私は止めないよ・・・それは彼らが信じた道だから・・・それを否定はしない・・・だけどね・・・』
顔を歪め、涙を溢す。
堪えきれない感情が押し寄せた。
『辛いよぉ・・・苦しいよぉ・・・』
「・・・ええ」
『・・・もう堪えられないっ・・・』
肩を抱くドロイドに雷雨はもたれ掛かる。
力が抜けていくのを感じた。
「もう大丈夫です・・・よく頑張りましたね」
表情一つ変わらない金色の顔。
それでも、その言葉には優しさが込められていた。
「そういえば、今日はクリスマス・・・というんでしょう?あなたの母星では」
『え・・・うん』
ほらと差し出された包装された箱。
掌サイズのその箱を受け取り、丁寧に開ける。
中にはまた小さな入れ物が入っていた。
「クリスマスプレゼントですよ」
開けば、中には写真が入ったロケットペンダントが納められている。
そのペンダントに驚きを隠せない。
『これを・・・どこで?』
「あなたの砂漠となった故郷に行ってみたんです。そうしたら、奇跡としか言いようがありません」
言葉を失い、写真を見つめる。
雷雨と一人の男が写った写真。
それは彼女の宝物であった。
『・・・もう見れないと思っていた・・・』
「喜んで頂けて良かった」
『・・・ありがとう、C3-PO』
空から鈴の音が聞こえた気がした。