雷雨’s blog

現実を書こう!

BLEACH夢小説/涅マユリ(マユリ視点)/微鬼甘

「あんな下等種に壊されていいと、いつ私が許した?」
血は涙のように。
涙は血のように。


●You are my world●


「いつまで地に伏せているつもりだネ?・・・立て、動け。このまま敗北したままなんて言うんじゃナイだろう?」
悔しそうに顔を歪ませる目の前のそれ。
血溜まりを作り、必死に立とうとする。
だが、立てる力など残っているはずもなく、幾度も身体を地につけた。
這いつくばって握り締めた斬魄刀はヒビが入り、闘いの激しさを物語っている。
卍解を奪う滅却師か・・・面白いネ。そして、君はその下等種に無様に負け、生きている訳だが・・・この意味が分かるかネ?」
『すっ、すみま・・せ・ん』
「五月蝿いヨ、謝るぐらいなら死んだ方が良かったんじゃないかネ!?エ!?」
蹴って仰向けにさせれば自然と目が合った。
「その目は何だ、何か言いたいことがあるなら言い給えヨ」
涙を堪えるように唇を噛む姿は見ていて腹立たしい。
もう既に理解している事を拒絶する幼稚な行為。
己の隊士をこのように育てた覚えは微塵もない。
「フン・・・愚かなプライドなど捨て給エ。君は―」
『弱い』
その言葉に口角も不思議と上がる。
嘲笑うかのように見下ろせば、小さな身体は魚籠ついた。
「分かっているじゃアないカ」
褒美に回復剤を打ち込む。
痛みに堪える声が漏れるが、そんなのは気にしない。
胸の切り傷、左足の骨折。
全てが治っていくのをジッと見つめる。
いつの間にか女は気絶したようで。
弱い目を閉じていた。
「こんなことで気絶するとは・・・全くつかえない奴だネ・・・だが」
言葉を切り、すぐ近くに転がっていた眼鏡を拾い上げる。
つるが壊れているが、レンズは無傷。
録画を停止させ、懐に仕舞った。
「データは取れたヨ、サァ・・・技局に戻るとしようカ。ネム!運べ!」
「はい、マユリ様」
逆らいもせずに優しく女を抱き上げるネム
その腕の中で規則的に呼吸をする様子に何故か安堵する。
こんな情は初めてだと己の胸に手をあてれば、先程の傷ついた姿が頭の中で渦巻き、心を締め付けた。
「フン・・・私も堕ちたものだネ」
道中、朽木が重体だの、あの半死神の卍解が壊されただの、厄介な話が嫌でも耳に入った。
それでも、怒りの矛先が変わることはなく。
研究室のモニターに映る映像を食い入るように見ていた。
巻き戻しては再生の繰り返し。
何度も弱る声を聴く羽目になり、視線は次第に睨みに変わっていった。
「・・・ヤン・ヴェスト・フルス・・・か。嫌な名前だネ、馬鹿力に、獣のような身体能力・・・そして、声が刃に変わる・・・つまり、音で幻覚を見せて操ることも可能な訳カ」
研究材料としては価値は低い。
其故に加減をしなくても済む。
「私の部下を傷つけたこと、後悔させてやるヨ」
そう呟き、傍の寝台で眠る小さな頬に手を添える。
涙の跡を拭ってやると、少し微笑んだように見えた。
「・・・形も残らないくらいズタズタに切り裂いてやるッ・・・ネム!仕事だ!ついて来い!」


―そう、何ものも わたしの世界を 変えられはしない―