雷雨’s blog

現実を書こう!

七夕夢小説/銀魂/武市変平太(ギャグ甘)

時計は16:33で止まっていた。
鼓動さえも。


ロリコンの恋にマニュアルなんていらない*


「そういえば、もう7月に入ってましたね」
大柄の男は突然そう呟いた。
茶屋の縁台に座り団子を頬張る。
隣に座る女は少し不機嫌そうに男を見た。
『そんなことより、何でいつも団子!?私、団子嫌いだって言ってるじゃん!武市変態!』
「変態じゃない、フェミニストです」
表情を一切変えず、男は顔を女に向けた。
フェミニストロリコンの間違いでしょう!・・・って聞いてる!?』
武市と呼ばれた男の眼差しは目の前ではしゃぐ幼女に向けられている。
それを知った女は言葉が出なかった。
「・・・何です?顔に何かついてますか?」
『犯罪者予備軍だ・・・お巡りさーっ』
大声で叫ぶと、それを抑える大きな手。
呼吸まで苦しくなると、女はギブアップだと叩いた。
「お止めなさい、もう私達は犯罪者ですよ」
『・・・』
シリアスな雰囲気に包まれる中、今の状況を思い返す。
よくドラマなどの誘拐シーンはそんな感じで表現される。
『・・・ふーん』
「なっ何ですか、そんな顔して」
意地悪そうな笑みで女は男の耳元で囁いた。
『今みたいな感じであの青い果実をっ』
「っ!!おっお止めなさいってば」
男は顔を真っ赤にさせると、咳払いをする。
その隣で楽しそうに笑った。
『でも、実際にいるかもね。私みたいに年上の人しか恋愛対象にならない幼女・・・私、幼女じゃないけど』
「・・・貴女は年上の人限定ではなくて、あの方にゾッコンなだけでしょう。・・・確かに、彼女達にも私のようにっではなくて、そのような感情を持つ者がいるでしょうね・・・ですが、それは好奇心に近いものかもしれませんよ・・・彼女達はまだ心も幼いのですから」
切なそうに俯く男。
食べ終えた団子の串を綺麗に並べ、財布を取り出した。
『女をナメ過ぎ。幼女っていったって女は女。女は男よりも心の成長が早いって知ってる?』
「・・・だが、貴女のように弱い」
女は目を見開く。
そして、何かを思い出したかのように空を見上げた。
何かを察した男は静かに口を開く。
「・・・貴女の方はどうなんです?」
『・・・』
言葉に詰まり、少しの沈黙が流れた。
雲に太陽が隠れると、女は男の目を捉える。
『今も私はあの日にいる』
その強い眼差しに男は思わず目をそらした。
「・・・そうですか・・・」
男は何か寂しさを感じるような気がしたが、気のせいだと心を律する。
それでも、少し胸が痛かった。


その夜。
宿に泊まった二人は食事を終え、寛いでいた。
床につく準備を始める男を他所に、女は窓から星を眺めている。
そんな様子に男は溜め息をついた。
「貴女ももう寝たらどうです?」
『うーん、星が見たくて。もう少し』
仕方がないと酒器を片手に女の隣に腰を下ろす。
小さな窓から空を見上げれば、数多くの星が輝いていた。
『寝ないの?明日早いのに』
「貴女に付き合いますよ」
一口酒を運び、男は女を見た。
『ふーん、変なの・・・』
女は構わず星を眺め、何かを探す。
「どうしました?」
その様子に不信感を抱いた男は聞いた。
『いや、やっぱりないかぁ・・・あるのかもしれないけど、そこまで知識ないし・・・7月7日なのにロマンチックじゃないよね』
「・・・7月7日・・・七夕ですか」
女は大きく頷く。
『そう!七夕。彦星と織姫が1年に1度会う日!』
満面の笑みで男を見つめた。
「貴女とあの方ですか」
『・・・でも、実際は成立しない・・・』
今にも泣き出しそうな彼女に男は首を傾ける。
『私は織姫でもなければ、あの人は彦星でもない。私達はそんな関係じゃないから』
そう言うと、女は男の胸に倒れこんだ。
慌てて酒器を避ける。
「それは今の段階の話ですよ、まだどうなるかは分かりません。誰にもね」
『・・・その台詞は貴方に返す』
ドキッとした男は扇子を取り出すと扇ぎだした。
酒で火照っているのか、今の発言に火照っているのかよく分からない。
「もう寝たらどうです?ほら、行きなさい」
渋々女は立ち上がる。
男は酒器を片付け、そそくさと布団に潜り込んだ。
心の中で己を律しなければと何度も言い聞かせ、目を瞑る。
彼女も床についたのか、目を開けた時には明かりは消えていた。
少し安堵すると、男は寝返りをうつ。
すると、何かが布団の中に侵入してきた。
その何かをすぐに理解し、男は慌てる。
「あっ貴女、正気ですか!?」
『なんか自分の用意するの面倒になっちゃって、ごめん。お邪魔します』
背中から感じる温もりに男の思考は今にも停止しそうであった。
女は枕だけを持ってくると、男の布団を半分引っ張る。
そして場所を落ち着かせ、瞼を閉じた。
男の腹に腕が回され、その感覚に男の肩が魚籠つく。
「貴女っなっ何をやっているか、分かっているのですか!?」
『うん、寝る。眠い』
暫く沈黙が続き、興奮して眠れない男は流石に彼女も寝ただろうと腕をほどこうとした。
だが、それは許されず。
『・・・ねぇ』
「ふぁっ!はっはい」
女は男の背中に顔を埋めると、静かに聞いた。
『七夕の願い事はもうしていたりする?』
「・・・それは勿論」
思わぬ問に声を震わせ答える。
それを知ってか女は少し笑った。
「貴女は?」
『さっきしたよ・・・16:33の時を進めること』
また男の胸がチクリと痛む。
『先輩の願い事は?』
「・・・」
少し沈黙が続き、男は不適な笑みを浮かべた。
「私の願い事は内緒です」
『え、狡い』
回された腕に少し力がこもる。
「私は別に願い事を言ってくださいとは言ってないですからねぇ、貴女は自分から言ったんですよ?」
女は項垂れると、そのまま睡魔に誘われるように、再び瞼を閉じた。
暫くして彼女の吐息が聞こえ始め、男は向かい合うように寝返りをうつ。
寝顔を覗きこみ、囁いた。
「私の願い事は貴女を振り向かせることです」