雷雨’s blog

現実を書こう!

劇場版『信長協奏曲』オンエア記念夢小説/柴田勝家(ほのぼの微切)

必死に生きてこそ、

その生涯は光を放つ。

 
      - 織田信長 -


〆同じ空〆


「今日も暖かいのぉ」


盤を挟み、男は縁側に座った。


『勝家さん』


か細い声が駒を並べる音と重なる。


勝家はその声の主をちらと見て、盤に目を落とした。


「平和じゃのぉ」


男が駒を一つ動かすのを向かいに座る女は静かに見つめる。


「どうじゃ、この手は?」


『難しいですね、流石です』


そう言いながらも、女は駒を動かした。


「むぅ・・・お主、難しいとは思ってはおらぬだろ」


『バレました?』


二人は笑い合い、空を見上げた。


青空の中を鳥が二羽飛んでいる。


それを見て、勝家は駒を動かした。


「平和は良いもんじゃ、こうして将棋を指せるからのぉ」


『確かにそうですね・・・』


女は勝家の一手に深く考え込んだ。


それを見て、勝家は再び空を見た。


「皆で笑い、楽しみ、時には悲しむ。そんな当たり前のような日常に儂らは感謝せねばならぬな」


女は勝家をちらと見ると、駒を動かし、そのまま固まった。


『・・・っ』


捨て駒


まんまとその手にハマってしまったのだった。


「平和とは、数多くの犠牲の上に成り立っておる。森の死も然り」


王手、それも詰みの一手を放たれ、女は投了した。


『・・・勝家さん』


「無駄な命なぞ無い。それでも、晴れんなら、儂を恨め」


『・・・』


涙を堪え唇を噛みながら、女は俯く。


勝家は頭をポリポリと掻きながら、困ったように盤上の駒をかき集めた。


「ほれ、もう一戦じゃ!次も負けぬぞ」


満面の笑みを女に向けると、女も頬を緩ませた。


『ふっ・・・私も負けません』


二人は座り直し、盤を見つめる。


その上で鳥は青空を自由に羽ばたいた。


まるで平和を謳うかのように。