雷雨’s blog

現実を書こう!

D.Gray-man夢小説/AKUMA level3 エシ(微切)

「何故お前は死なない?」
血は巡る、黒いペンタクルとなって。


†title†


「答えろッ!」
無数の眼球を見開き、怒り狂う。
level3のアクマは負け知らずだった。
故に眼前の勝者に焦りを隠せない。
『・・・呪い・・なの』
赤黒くなった女の身体が徐々に元に戻り始めた。
アクマはその光景を切り取るように両手で枠を作る。
「呪い・・だと?」
『ええ、呪い・・・私は死ぬことが赦されない』
「・・・title」
女は次の言葉を待ったが、その時が来ることはなかった。
固まって動かないアクマをじっと見つめ、口を開く。
『エシ・・・』
「・・・何故、私の名を知っている?」
『貴方が忘れてしまっただけ・・・私の名を』
歯を剥き出しにし、ケラケラ笑うアクマ。
そして、少しの苛立ちと見下したような視線を女に向けた。
「お前は何を言っているっ?生前の記憶ならあるさ、神など存在しない薄っぺらいこの世界で生きた記憶がなっ!」
女は寂しそうに俯くと、血溜まりに写る自分が幼さを帯びるのを見る。
見上げれば、そこは世界を変えていた。
懐かしの故郷を見回す。
視線はある一点で止まった。
「寄ってらっしゃい見てらっしゃい!こんなに綺麗な絵画がありますよ!さぁ、一枚どうですか!?」
男が必死に呼び掛けるも、誰も足を止めない。
少女の視線に気づくと、男は笑顔で手招きをした。
少女は不思議そうに歩を進める。
「また来たのかい、嬢ちゃん。ほら、描いてやるから、そこに座りな」
ボロボロの椅子に促され、指示されたポーズをとった。
黙々と描き続ける男。
時々視線が交じると、悲しみを覚えた。
膨れ上がる感情に堪えきれず、立ち上がる。
『エシ・・・』
名をもう一度呼び、目の前の顔を見上げた。
「お前は私の中にはいない」
女の胸を貫通させ、心臓を鷲掴みにしながら、アクマは冷たく言い放った。
だが、それでも女が倒れることはない。
『私が貴方を作った』
「・・・何だと?」
『そして、私は伯爵と契約を結びっ・・・』
言い終わる前に、身体を吹き飛ばされる。
地に伏せ、動きを止めない心臓が転がるのをただ見つめた。
「図に乗るなよっ!女!!お前の全てに虫酸が走るっ!!」
『・・・貴方の記憶と引き換えに、私は死ねない身体になった』
「ヤメロッ!!!!」
苦しむようにアクマは頭を抱える。
それでも、女は止めなかった。
『記憶は私以外の全て・・・そして、私は永遠に伯爵の駒として働く』
「何故だっ!?何故そこまでして私に記憶などっ!?」
女の口の動きが何か別のものと重なる。
その光景にアクマは驚き、彼女の言葉を静かに聞いていた。
『お兄さんは絵を描くのが好きなのね』
「ああ!勿論!絵を描けなくなったら、もうそれは僕じゃないよ」
『もし、忘れたら?』
アクマの視界に記憶が広がる。
目の前のやり取りをただ見つめた。
「うーん、いや・・・。きっと忘れないさ。それに、君がいればすぐに思い出す!」
『本当?』
「ああ!本当さ!」
ほんの数分の場景に、呆然と立ち竦む。
何故女の記憶が流れ込んできたのか、検討もつかない。
だが、女の言ったことは嘘ではないのだ。
「お前がいれば私の記憶は完成する」
まだ地に伏せている女を見下ろす。
女は立つ気力を失ったのか、空をただ見ていた。
「立て、私と共に来い」
何も反応はない。
瞬きすらしないその瞳には光が灯ってはいなかった。
「契約違反デ死ニマシタネ」
突然の声にアクマは振り返る。
そこにいたのは伯爵であった。
「違反?」
「エエ、君ガ彼女ヲ思イ出シタラ、彼女ノ魂ハ私ノ元ニ来ルコトニナッテイタノデスヨ」
ほらと、伯爵は手の上の魂を見せた。
淡い桃色に輝くそれを囲むようにアクマは両手を伸ばす。
「title・・・」


『タイトル!花吹雪!』
「え?」
『これ、花吹雪みたいだもん』
抽象的に描かれたピンクの絵を少女は手で枠を作り、その中から片目で見つめた。
「じゃあ、これは?」
『うーん、それはー。タイトル!花火!』
「単純だなー、じゃあ僕もこれに名前をつけようか」
男はそう言うと、少女を描いた絵を指し示す。
笑顔で見上げる少女を重ねて、彼は口を開いた。


「我が愛し手毬花」