雷雨’s blog

現実を書こう!

土曜プレミアム・世にも奇妙な物語’17 秋の特別編記念オリジナル小説(主人公視点)

「俺、明日死ぬんだ」


〆寿命カレンダー〆


昨日、仲村はそう俺に言った。


そして、今日、あいつは死んだ。


『お悔やみ申し上げます』


遺族に挨拶を済ませ、外に出る。


お経があがるのを聞きながら、煙草を吹かした。


黒い空に昇っていく煙に昨日を出来事を思い出す。


「俺、明日死ぬんだ」


『・・・何言ってんだよ』


仲村は一点を指差した。


そこにあったのはカレンダーであった。


「あのカレンダーが俺の寿命なんだ」


『は?ただの日捲りカレンダーじゃねぇか』


「捲ってみろ」


言われるままに捲ると、明日以降の日付の分がそこに存在しなかった。


途中で途切れるカレンダーなど聞いたことがない。


『冗談だろ、変なドッキリやめろよ』


「・・・俺が死んだら、それは燃やしてくれるか?」


『そんなに言うなら今燃やそうぜ』


「やめてくれ!」


血相を変えて、俺の肩を仲村が掴んだ。


「俺を今日殺す気か?」


『・・・仲村』


その後、俺は家に帰り、翌日仲村の死を告げられた。


葬儀場を背に一歩重い足を仲村の家へと向ける。


今は人の出入りが激しく、鍵はかけられていない。


そっと中に入り、例のカレンダーを探す。


既にそれは剥がされ、ごみ袋の中に放り投げられていた。


気持ち的に一度手を合わせ、それを抜き取る。


まじまじと見ても、それは極普通の日捲りカレンダーだった。


そして、直ぐに異変に気づく。


何故、カレンダーの紙があるのだろうか。


昨日、仲村家へ訪ねた時には確かにその日の一枚しか無かった筈である。


と突然、玄関が開いた。


「あら、小籔さん・・・こちらにいらっしゃったんですか・・・先程葬儀が終わりました」


入ってきたのは仲村の母であった。


そして、少し考えて続ける。


「喜一は小籔さんの話しかしなかったんですよ・・・死ぬときも」


その言葉に胸が痛んだ。


だが、心臓麻痺という突然の死にやるせなさも感じる。


『そうですか・・・仲村君が・・・』


「「できることなら小籔とずっと一緒にいたい」なんて今日も話してたんですよ」


カレンダーを持つ手に力が入る。


目頭が熱くなるのを感じながら、家を出た。


外の空気はいつも以上に不味く感じる。


幼少期から仲村と共に過ごしたこの街の光が寂しさを漂わせた。


『ごめんな、仲村。お前の言う通りだったよ』


ホームレスが使いそのままのドラム缶が目についた。


ポケットからライターを取り出し、カレンダーに火を着ける。


あっという間に燃え上がり、ドラム缶の中で熱を放った。


"「・・・俺が死んだら、それは燃やしてくれるか?」"


『燃やしてやったぞ、仲村』


約束が果たされたことで、少しは報われるだろう。


そう思った次の瞬間、突然胸が激痛に襲われた。


呼吸が苦しくなり、視界が暗くなる。


倒れた草の上で、思い出す。


"『そんなに言うなら今燃やそうぜ』


「やめてくれ!」


「俺を今日殺す気か?」"


ドラム缶がパチパチと音を立てた。


『・・・仲村』


振り絞った声はそれっきりだった。


"「「できることなら小籔とずっと一緒にいたい」なんて今日も話してたんですよ」"