雷雨’s blog

現実を書こう!

Guardians of the Galaxy夢小説 ヨンドゥ・ウドンタ(?)

すべての美しいものの陰には、

何らかの痛みがある。

 

★Living proof☆

いつも見ていたのは暗闇だった。
地球に生まれて名前のない星で育った。
私には何もなかった。
「こいつが報酬だって?」
男のかすれ声が響き渡る。
「冗談だろ?俺らは1tも密輸した!1tだぞ!?」
机を強く叩く音と同時に女の隣に立つ別の男が静かに笑った。
「だからだ。こいつは使えるぞ?」
「何ができるってんだ、このずだ袋に!」
そう言うと、女の顔を隠していた、ずだ袋を勢いよく外した。
「・・・こいつは」
「やっと見つけたんだ、適合者をな」


交渉が終わった後、女は隅に座り、男の行動をただ見ていた。
その視線に気づきながらも、男は自然に振る舞い、たまに女に目を移しながら、存在感のある瞳を確認していた。
「・・・名前は?」
女は首を傾け、瞬きすらしない目を動かさなかった。
『名前?』
「そうだ、名前だ。俺はヨンドゥ・ウドンタ、船長をやってる」
男は立ち上がり、胸を張った。
『・・・ヨンドゥ』
「お前の名前は?」
男がもう一度尋ねると、初めて女は俯いた。
『ない』
「・・・そうか、なら、付けてやろう・・・そうだな・・・何か好きなものとかないのか?」
『好きなもの・・・』
視線の先に本の背表紙が目に留まると、女はそれを読み上げた。
『ライウ』


2年後。
「どうした、ライウ!!お前の力はそんなもんか!?」
『船長ー!!!』
首を目掛けて刀を振り下ろしながら、ライウは一歩ずつヨンドゥを壁際に追い詰める。
しかし、ヨンドゥは余裕のある笑みを浮かべて、口笛を吹いた。
刃がヨンドゥの首、手前1cmで止まる。
女は汗を1滴たらし、自分の胸の前にある矢を見た。
再び視線をヨンドゥに戻すと、刀が小さな音をたてて折れる。
『参りました』
その答えと同時に口笛が吹かれると、矢はヨンドゥの手へと戻った。
「まだまだだな」
ライウの肩を一つ叩くと、ヨンドゥは豪快に笑った。
『何が足りないんです?』
「・・・それは自分で考えることだな」
ヨンドゥは少し歩いて、思い出したように立ち止まる。
ライウは何事かと顔をあげた。
「新しい刀はあとで買ってやる」


「ライウ!!目を覚ませ!!頼む!死ぬな!」
ライウは焦点の定まらない目を少しだけ開けて、目の前のヨンドゥに疑問を投げ掛けた。
『・・・私、何し・・て?』
「しっかりしろ!お前は任務の途中で爆発に巻き込まれたんだ!!」
断片的に記憶の情景が浮かぶと、ライウは力を振り絞り立ち上がる。
「何故だ、どうしてお前ともあろうものが!訓練の時もそうだったが、お前の目は節穴か!?」
『未来が見えたとして、体がついていかなければ意味がない』
ヨンドゥは思わず、ライウの頬を引っ張った。
「鍛えとけって言っただろ!」
ライウは目を見開くと、ヨンドゥを力強く押した。
突然のことに驚き、尻餅をついたヨンドゥは頭を掻きながら目の前に立つライウを見上げる。
「喧嘩はあとで買ってや・・・」
『・・・やっぱり、鍛えないとなぁ』
その場で崩れ落ちるライウを抱き留め、彼女の胸に突き刺さる瓦礫の破片に手をあてる。
「しっー、大丈夫だ、今抜いてやる、大丈夫だ」
『・・・ヨンドゥ・・・これ』
ライウは掌を広げ、何かを見せる。
「そんなのあとでいい、一緒に帰るぞ」
『持って・・いて・・・』
視界が暗くなり、ライウは目を閉じた。
『待て、目を開けろ!ライウ!!ライウ!!!!』


電子音が微かに耳に届き、ライウは目を静かに開いた。
そのことに気づいたヨンドゥは椅子から立ち上がり、ライウの顔を覗きこむ。
「気がついたか、ライウ」
『・・・ヨンドゥ?』
頭がまわらないライウは、天井を見つめた。
『・・・生きてる』
「当たり前だろ」
ライウは笑みをこぼすと、視線をヨンドゥに移した。
「これは返しておくぞ」
動かないライウの手に何かが落とされる。
「・・・本当に死ぬ時にしか、これを手放すな」
『・・・死ぬと思ったんだよ』
ヨンドゥはいつもより少し力を込めてライウの頬を引っ張る。
「俺が生きてる間はお前は死なねぇよ」
『・・・痛い』
手を離し、ヨンドゥは豪快に笑った。
「生きてる証さ」