雷雨’s blog

現実を書こう!

異界入り2020記念夢小説/SIRENお相手なし

日は巡り、命は生き絶える。
屍は蠢き、時は遡る。
今宵もそれは鳴り響く。


† Repeated SIREN †


海送り。
羽生蛇村から伝わった民族行事の一つである。
眞魚教を信じ、何一つ疑いもせず、今日まで過ごしてきた。
生け贄だと言って、腐敗した家畜を捧げる。
大昔には人を捧げていたとも聞く。
馬鹿馬鹿しい。
外の者の絵空事だ。
そう自分に言い聞かせてきた。
だが、なんとも言えなくなってきている。
というのも、昨日、村に迷いこんできた外国人が、私たちに猟銃を向けたからだ。
彼は私たちをじっと見て、安堵したかのように溜め息をつくと、泣き出した。
話を聞けば、ずっと戦ってきたと言うのだ。
しかも、村人と。
彼はきっと森でさ迷い、幻覚を見たに違いない。
と率直に思ったのだが、やはりおかしい。
彼は警察に保護されたのだが、警察が言うに、彼が行方不明になったのは、12年前らしいのだ。
12年もの間、果たして森で生き残れるのか。
私には疑問が残った。
村の者たちも、不審がっていた。
だからこそ、私は今日、海送りを行うことに躊躇いがあった。
罪や穢れを清めなければいけないと思いつつ、あの外国人が頭をちらつくのだ。
そして、恐る恐る水へ足を踏み入れると、いつもに増して水温が冷たい気がした。
一歩ずつ奥へと進むが、何故か足が重い。
やっとの思いで、中心部へ辿り着くと、どこからか微かな音が鳴り響いた。
それは徐々に大きくなり、サイレンの音だと分かる程に村に響いた。
そして、足に違和感を覚え、下へ目をやると、私は言葉を失った。
そこには、水ではなく、血溜まりが広がっていたのだ。
『皆、水から出ろ!!!』
危険を感じ、村の者たちを避難させようとしたが、時既に遅し。
彼らは次々に水中へと引き込まれ、消えていった。
断末魔のような叫び声だけが残り、最後に私の目に写ったのは一人の少女だった。