雷雨’s blog

現実を書こう!

ハリー・ポッター/クィリナス・クィレル/切甘

「どうしたんですか?雷雨、そんな顔して」
隣にいたのはいつも君でした。


*Your warmth in me.*


「雷雨、また喧嘩したの?」
ハーマイオニーは唐突に小声で質問を投げ掛けた。
『どうして分かるの?』
雷雨も驚いた様子である。
「分かるわよ。だって、あなた。喧嘩した時はいつもここで本を読むじゃない」
ここと呼ばれた図書室は生徒達の憩いの場だ。
勉強熱心な生徒は一日中入り浸っている。
『まっまぁね・・・』
「それに、聞いたわよ。学校辞める気でいるって・・・本当??」
『あ、もうそこまで広まってるんだ・・・』
俯く雷雨にハーマイオニーは続けた。
「どうして、辞めるの?そこまでしなくてもいいじゃない。ただの喧嘩でしょう??それに、こんなこと去年もあったわ。あの時だって、あなた我慢できてた・・・」
「二人して何の話をしてるの?」
会話を遮るように割って入ってきた二人組。
ハリーとロンである。
「もう、これだから男子はっ。少しは空気読みなさいよ」
怒って出ていくハーマイオニーに二人は唖然とした。
「え、僕、聞いちゃいけないことを聞いた?」
雷雨は返事の代わりに微笑むと、席を立つ。
そそくさと本を棚に戻し、その場を後にした。
「女子って分かんないなぁ」


雷雨が向かった先は最上階。
風が吹き抜け、心地よい光が入る。
下を見れば、たくさんの生徒の姿。
クィディッチの練習場も見える。
手摺に体を預け、外に倒れるように空を眺めた。
青い空に変な鳥の群れ。
何も変わらない。
ただ変わったのは―。
「何をしているんですっ!?そこから離れてくださいっ!」
『!?』
突然の声に驚いた彼女はバランスを崩す。
体重移動が間に合わない。
落ちると思った瞬間、彼女の体は空中で止まった。
正確に言えば、声の主に抱き抱えられたのだが。
『・・・クィレル先生』
「まったく・・・どうしてこんなところにあんな体勢で??・・・まさか」
言葉を察した雷雨は横に強く首を振った。
『死のうなんてしてませんよ。ただ、空を眺めていただけで』
「空?」
思わず男は斜め上を見上げる。
「特に何も変わったところはないですが・・・」
『だからですよ。・・・何があっても変わらないこの空を眺める度に私は、どんなに自分がちっぽけな存在かと再確認するんです』
男は苦笑した。
「それって、良いことなんでしょうか?何か私にはただ自分を戒める・・・責めているようにしか思えません」
『・・・私は全て間違ってきましたから』
微笑みながら男は雷雨を静かに降ろした。
「確かに君は間違っています」
言葉を返せず俯く彼女の頭に優しく手を乗せる。
震える姿は男に学生時代を思い出させた。
優秀と言われながらも、オドオドした態度や神経質な様子から周囲からからかわれていたあの頃は悪夢でしかない。
今も差ほど変わらない生活に嫌気が差している。
それも、全てが上手くいけば終わる。
今だけの辛抱。
今だけの。
『・・せい、せん・・先生』
男は我に返ると、彼女の涙を拭った。
「すみません。少し昔を思い出してしまいました」
『・・・昔?』
「はい。私も君と同じですよ、雷雨。いつもいつも間違っていました。間違っていると知りながら後戻りをする勇気がなかった・・・」
今もと言いかけて口をつぐむ。
そんな姿に雷雨は首を傾げた。
「君はちっぽけな存在なんかじゃない。君と一緒にいた時間は私のかけがえのないものですよ。そこはもう間違えないでくださいね」
頷く彼女の頬に手を添えて。
「私のようにはならないでください」


「どうしたんですか?雷雨、そんな顔して」
君と私はよく似ていた。


ありがとう。