I'm one with the Force,
(我はフォースと共にあり、)
and the Force is with me.
(フォースは我と共にある。)
☆Any number of times★
ジェダ。
故郷には守るものなど、もうない。
だが、男がベイズと共にまだここに居座るのには理由があった。
「何を待っているんだ、チア」
少し離れて壁に寄り掛かるベイズは首をかしげた。
光の宿っていない瞳を一点に集中し、チアルートは答える。
「見ず知らずの女だ」
その答えにベイズは混乱した。
見ず知らずの女を待つなど、頭でもおかしくなってしまったのだろうか。
そんな考えが浮かんだ。
だが、チアルートは真剣である。
曲がり角を見つめ、姿のない女を待ち続けた。
「そろそろだ」
「何っ?」
時間など指定できるはずがない。
そろそろだと断言するチアルートに、ベイズは一層不安を覚えた。
「何を言って・・・」
言葉を遮るかのように、現れた人物にベイズは驚きを隠せない。
不安は一気に恐れに変わった。
角を曲がって現れたのは女だったのだ。
『初めまして、チアルート様』
「様か・・・初めまして、雷雨」
二人のやり取りは第三者からすれば異様なものであった。
初めて会う者同士が、お互いの名を知っている。
それは、ベイズにとってもおかしな光景である。
「様をつけない呼び方を聞きたいものだが?」
『それは難しいお話ですね、私はあなたを尊敬しているので』
この二人はどう見ても、見ず知らずではない。
だが、ベイズは口を挟むのは何だか悪いと思い、ただ見ているだけに留まった。
「今回はどこまで来る気だ?」
『最期まで、共に』
「毎回死ぬのは辛いだろう、もうこれで止めた・・・」
『・・・』
静けさの中、二人は見つめ合う。
雷雨は涙を溜めて、俯いた。
それをチアルートは優しく抱く。
『死の痛みなど一瞬です、チアルート様に会えるのに比べれば小さなこと・・・ですが、チアルート様に何度もその苦痛を味わわせるのは心が痛みます』
「私も耐えられる、お前が良ければ、また来なさい」
チアルートの腕に力が籠った。
雷雨は顔を埋め、ただ頷く。
「後で会おう」
そう言って、二人は別れた。
小さな背中を見送るチアルートに、ベイズは口を開いた。
「何なんだ、あの女は?」
「見ず知らずの女だ」
「隠し事か?チア」
「いや、本当の事さ、ベイズ。我らは歴史の一部に過ぎない。歴史は一度刻まれれば、変わることなくそれを繰り返す。だが、その中でフォースは私に記憶を授けた。」
ベイズは眉間に皺を寄せた。
その顔を見てチアルートは少し笑うと、女とは別の方向に歩き始めた。
「あっ、おい、待て!さっぱり意味が分からんぞ!」
「分からなくていい、私には分かる」
―何度もお前は私に会いに来る。
その度に私は初めてお前を知る。―
「雷雨、愛している」