A long time ago in a galaxy far,
far away . . . .
(遠い昔、遥か彼方の銀河系で....)
†Friday the 13th☆
『ヒャッフー!!クリスタルレイクやでーー!!』
テンションが上がりすぎたのか、下手な関西弁で叫ぶ女。
彼女の目の前には美しい景色が広がっていた。
そう、ここはクリスタルレイク。
その名の通り湖である。
キャンプ場として名高いここは、なんと凄惨な殺人現場としても知られる。
殺人鬼ジェイソン・ボーヒーズ。
彼はここで数えきれないほどの魂をこの世知辛い世の中から解放した。
そして、母親を崇拝し、この地の伝説となった。
"13日の金曜日の夜に彼は現れる"
そんな噂が絶えなかった。
彼女もその噂を確かめに来た愚か者の一人である。
『ジェイソンくぅぅううん!!』
名前を呼んで出るはずもなく、時は刻々と過ぎていった。
それでも、彼女は諦めずに歩き回る。
方位磁石は辛うじて反応していた。
だからといって、ジェイソンの所在は掴めない。
思わず溜め息が漏れた。
21時に到着し、探してから2時間が経過していた。
さすがに彼女も諦めようとしたその時。
後ろで何かが蠢いた。
恐る恐る彼女は懐中電灯を向ける。
すると、それは勢いよく飛び出した。
『うわっ!?』
目の前を遮る大きな壁。
いや、それは人間であった。
2mはあるであろうその体はボロボロである。
彼女は光をその天辺へと向けた。
その正体に息をのむ。
ひび割れたホッケーマスクの間から覗く血走った目。
それは彼女へと向けられていた。
男の右腕が静かに上がる。
その手には鉈がしっかりと握られているのがハッキリと分かった。
やられる!と彼女は目を瞑った。
だが、一向に痛みは襲ってこない。
目を開けると、そこには得体の知れない何かが男の腕を掴んでいるではないか。
「申し訳ないですが、雷雨様。私もこの作品に出たいです」
『ちょっ!K-2SO!何やってんのー、カットカットー!ほら、ジェイソン困ってんじゃんー』
小首を傾げ、ジェイソンはK-2SOを見た。
K-2SOもジェイソンをチラと見る。
『今日は13日の金曜日記念の夢小説よ??そのためにジェイソン君を呼んだんだから。彼忙しいのよ??ついにゲームまで出てしまったんだから!』
「ですが、ローグ・ワンだって今日は特別なんですよ。小説版がついに発売されたんですから。記念に出させてください!」
バチバチと火花を散らす二人をジェイソンはあたふたしながら、止めようと手を動かす。
『何で今更なんだよ、普通映画と同じ時期に発売されるだろー』
「それだけローグ・ワンは特別な映画ということです。そして、お言葉ですが雷雨様。13日の金曜日はこの日一度限りではございません。ですが、この小説発売日はもうやってこないのです!」
ハッと我に返る雷雨。
電流が走ったかのような衝撃に襲われ、ふるふると体を震わせた。
その様子を見ていたジェイソンは彼女の背中を優しく擦る。
彼女が顔を上げれば、グッと親指を立てるのであった。
『でも、どういう話にする?』
雷雨は憔悴しきった顔をK-2SOに向けた。
「そうですね・・・やはり、ここはスター・ウォーズの世界観を全面に出しましょう!」
『というと?』
「ほら、そこに暗黒卿が」
二人の視線はジェイソンへと注がれた。
『ちょっ、えっ、確かに暗黒に堕ちてるし、ホッケーマスクでそれなりにそう見えるけども!!』
「あ、ローグ・ワンにも・・・」
『あー!ちょっと待って!それはネタバレというやつよ!!危険危険、danger』
「あとはシスマスターが必要ですね、なので、この方を呼んでおきました」
奥から一人の老婆が出てきた。
老婆には見覚えがある。
少し考えて、雷雨は吹き出した。
『K2!待て待て!あの方はまさか』
「はい?ジェイソンのお母様に決まってるではないですか」
『確かにパルパティーンだけどもっ!てか、よく首繋がってるな!』
「いや、それは演技ですからね」
『それをお前が言うな』
二人の会話にジェイソンとお母さんは顔を見合わせる。
そして、昇る朝日に目を細めた。
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『ほら、お前のせいで14日の土曜日だわ!』
「それより、ダース・ベイダーのダースってチョコなんですかね?」
『違うわっ!!』