束の間と分かっていても嬉しいよな。
また、不安になっていろいろあるかもしれないって理解してるけどさ。
やっぱり、幸せが一番だよな。
この瞬間は何も考えられないから。
他のことは考えたくないから。
今を楽しんだら駄目かな。
久しぶりに楽しいんだよ。
また幸せは旅に出ていってしまうけれど。
それまでは幸せをもてなしても良いよな。
今度はいつ帰ってくるんだろう。
そんなこと誰にも分からないから。
空見あげてる。
雨が降っていたこの空も。
今は止んでいて。
光が眩しいくらいだ。
青い空を多い尽くすほどの光だ。
自分まで焼け尽くされそうな熱だ。
道路は蜃気楼のようで。
ユラユラと揺れていた。
遠くに誰かがいたけれど。
誰かも分からない。
でも、ずっとこっちを見ていて。
目が離せなかった。
その黒い影は怖いものじゃなくて。
どこか安心感があった。
近づきたかったけれど、暑さに溶けてしまった足は。
アスファルトから離れてはくれなくて。
ただただ立ち尽くした。
汗が滴り落ちて。
蒸発して目の前から消えた。
目の前が暗くなってきて。
意識が遠退くのを感じた。
そこで目が覚めて。
夢だったと初めて気づく。
暗い部屋にカーテンがはためいて。
月明かりがちらついた。
開いた窓から夜風が吹いて。
心地よさに瞼を閉じる。
夢で見た光景を思い出さないように。
何が幸せかなんて考えないように。
再び吐息がもれた。
このまま目覚めなくてもいいなんて。
いつかは思っていたけれど。
やっぱり息をしているほうがいい。
手と足の感覚が分かるほうがいい。
匂いも味も。
音も目の前の美しい景色も。
感じれるほうがいい。
いつかは動かなくなるその日まで。
僕らは背中のネジを回して歩き続けるから。
どこかに落としてしまった金具も。
誰かが拾ってくれるから。
剥がれた塗装もまた塗り直せるから。
僕らはここにいる。
疲れたら休めばいいさ。
皆一緒だよ。
完璧な人間なんてどこにもいないからさ。
こうやって僕らは笑い合うのさ。