雷雨’s blog

現実を書こう!

駅に落ちていたメモその7

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不信感はあったが、言われた通りに彼女の後をついていった。
懐中電灯を持っているのは彼女だけだったし、なにより線路がどうなっているのか気になった。
外と違って、光を照らせば道は見える。
天井が崩れてきそうな感じもしない。
けれど、1つだけ不安があった。
『線路を歩いている時に電車が来たことはありますか?』
彼女は少し振り返って、また歩き始める。
「…いいえ、電車自体来たことがありませんよ」
その言葉に驚愕した。
俺は電車から降りたはずだ。
『それはおかしいですよ…だって、俺は電車から降りたんですよ?◯◯◯さんもですよね?』
「私は外を歩いて来たんです」
俺は言葉を失った。
何も見えない外を歩いてきたなんて、とても信じられない。
ますます不信感が募る。
『懐中電灯でも、あの外は見えないですよね?』
「いいえ、見えました。ハッキリと道が」
こちらを見る彼女の顔はいたって真剣だった。
(…目…覚……て)
そこで、突然後ろから声が聞こえた。
俺は恐る恐る振り返る。
けれど、そこには何もいない。
再び彼女の方を見ると、彼女もいない。
どこにいったと辺りを見るが、懐中電灯の明かりもなく、ただ暗闇が広がっているだけだった。
(…起…て)
またあの声だ。
頭が痛い。
(生き…)
俺は何も考えず、声のする方へと走った。