雷雨’s blog

現実を書こう!

ハリー・ポッター/クィレル教授寄りのスネイプ教授/微甘

私は君のために。
君の幸せを願っている。


*Crawf was drunk by a snake.*


レイブンクロー寮。
皆が寝静まった深夜。
少女は一人、暖炉の傍に踞っている。
溜め息を漏らせば、窓の外で何かが音をたてた。
音のする方へ目を向けると、そこには手紙をくわえた一羽の梟がこちらを見ている。
『・・・』
窓を開けて、少女は手紙を受け取った。


"雷雨、今すぐ私のところまで来なさい。今回の件でお話があります"


たったの二行、そう書かれていただけだった。


雷雨は廊下を歩きながら、今日、いや昨日の出来事を思い出していた。
昼下がりにやってきたスリザリン生。
女生徒が二人、男生徒も二人。
計四人で取り囲んできたのである。
何かしたかと雷雨が問えば、四人は顔を見合わせ笑い合う。
そして、気づいた頃には四匹の豚になっていた。
『失礼します』
ドアをノックし、恐る恐る部屋を覗く。
見えたのは、外を眺めているであろう男の後ろ姿だった。
「そこに座りなさい」
指定されたソファへ腰掛ける。
沈黙が続き、時計の音だけが大きく響く。
雷雨の隣にはグリーンイグアナが吐息をたて、眠っていた。
「早速、本題に入りますが、先に言いたいことはありますか?」
『・・・いいえ、ありません』
男は向かいのソファに腰を降ろし、一枚の紙を取り出す。
「こんなことはしたくないのですが・・・」
男は渋々、停学書類と書かれたそれを目の前のテーブルに置く。
雷雨は視線を反らし、鼻をならした。
「ですが、どうしてあんなことを・・・?」
『・・・』
口を開かない彼女に男は思い出したかのように、声を漏らす。
雷雨は何事かと眉をひそめた。
「そういえば、新しい紅茶が手に入ったんですよ」
二人分の紅茶を用意し始めながら、魔法を使い、紙が折り畳まれる。
その用紙に雷雨は唖然とした。
「飲んでからにしましょうか」
『・・・でも、私、紅茶嫌いだって言いましたよね?』
その一言に男は顔を真っ赤にしながら笑う。
「これは失礼。そういえば、そうでしたね。君は珈琲派でした・・・でも、騙されたと思って飲んでみてください」
運ばれた紅茶に顔を歪めながら、男を見やる。
微笑み返され、仕方なく一口だけ口に含んだ。
『・・・』
「どうですか?」
顔を覗いてくる男。
驚きを隠せなかった。
『・・・美味しい』
「それは良かった!それはですね・・・、これが・・・でですね、・・・」


「お前さ、生意気過ぎてウケるんだけど!」
『は?』
「先生に媚びてるだけの奴がレイブンクロー?笑わせんな、お前は成績が良いんじゃなくて、媚びるのが上手いだけ!」
『あ、ども』
「褒めてねぇし!馬鹿?ねぇ、馬鹿?」
『さぁ?』
「てか、スネイプ先生にまで関わんじゃねぇ!」
『何で?』
「目障りなんだよ!スネイプ先生はスリザリンの先生。分かる?分からないよね、そんな頭じゃ!」
『・・・』
「何か言えよ!言ってみろよ!お前なんてあのドモってるオドオドクィレルの生徒だろ!ドモって何も・・・」
『Disguise』


「で、手に入れました。やっぱり、買っといて良かった!」
『先生』
空気が変わり、男は首を傾げた。
『・・・私、本当は・・・』
言葉を遮るように雷雨の顔の前に人差し指が立てられる。
そのまま、指は静かにとでも言うように相手の口元へ戻った。
微笑む男の姿に目を見開くしかない。
イグアナが隣で目を覚まし、飼い主の膝の上に移動した。
「分かっていました。本当はね。でも、君から言おうとはしなかった。だから、こんな紙まで作り上げたんです」
折り畳まれた紙が空中から男の手元へと降りてくる。
雷雨の目の前でそれは破り捨てられた。
「校長とスネイプ教授にはご理解いただいております。私は、ただ君と話す機会がほしかっただけです。教師として」
『・・・』
家に帰れば家族ですからねと付け加え、時計に目を向ける。
もう既に一時をまわっていた。
「さぁ、安心してもう戻りなさい。話は終わりました。」
『・・・』
「雷雨?」
俯いていて顔がよく見えない。
少し待てば、啜り泣く声が微かに聞こえる。
「・・・少しやり過ぎましたか」
隣に席を移し、背中を擦った。
「スネイプ教授は君を褒めていました。よく頑張っていると」
肩を魚籠つかせる雷雨に男は苦笑した。
「諦めなくていいんじゃないですか?スネイプ教授のこと」
驚いた様子で睨みつける雷雨。
そんな彼女に男は続けた。
「昔から気づいていましたよ。多分、他の人もね。本人も気づいていたりして?」
『え!?』
「嘘ですよ、嘘」
からかわれた雷雨は思わず顔を手で覆う。
その隣で静かに笑う男であった。


後日。
「雷雨、この問題を解けるか?」
魔法薬学の授業で教師は少女に問いた。
笑顔で返事をする少女に周囲がざわつく。
教師が睨めば一気に静まりかえった。
それでも、彼女は気にする様子もなく、淡々と答える。
『どうでしょうか?先生』
「・・・正解だ、レイブンクローに10点」
その一言にスリザリン生はブーイングである。
その中には例の四人もいた。
陰険根暗の代名詞と言われるスリザリン。
だが、この男だけは違った。
「スリザリン10点減点」


愛は貫くことに意義がある。
一人の人間を愛し続けるにはそれなりの努力が必要。
自分の要求が満たされないと気持ちがさめてしまうような自分勝手な愛ではとても続かない。


「君は愛しい人のために」