雷雨’s blog

現実を書こう!

BIOHAZARD Village発表記念夢小説/ハンク(微戦)

On the morrow he will leave me, as my hopes have flown before.
Then the bird said, `Nevermore.'
夜明けには、こいつもいなくなるだろう。私の希望がとっくにいなくなったように
すると鳥が喋った。「もう二度と」


† Flightless bird †


「逃がすな!追えっ!」
武装した男たちが次々に路地へ姿を消していく。
遠くで銃声が鳴り響き、時に地面が揺れた。
外の様子を窺いつつ、女は慎重に瓦礫の中から這い出る。
何もなかったかのように土埃を払い、周囲を見回した。
多くの建物が損壊し、道路のコンクリートはひび割れ、血溜まりが点々としている。
女はその中に月明かりを反射し、光放つものを見つけた。
ゆっくり近づき、それを拾い上げる。
一見ドックタグのようにも見えるが、カードのようにも見える。
それは先程男たちに追われる前に、とある廃墟で見つけたものだった。
女はそれがどのようなものなのか分からないが、捨てる気にもなれず、ポケットに仕舞っていたのだ。
そして、知らぬ間に落としてしまっていたようである。
再びそれを仕舞おうとして、女は手を止めた。
「それを渡してもらおうか、雷雨」
ガスマスクを着けた一人の男が背後から頭に銃を突き付け、冷淡に言い放つ。
女は掌の上のそれを見つめた。
『…今回は私じゃなくて、これが目的だったのね、ハンク……これは何?』
「……お前は知らなくていい」
両者の間に沈黙が流れる。
風が強くなり、雲が月を隠し始めた。
『…私にもクライアントがいるの』
月明かりが消え、暗闇が辺りを包む。
「深入りはするなと忠告した筈だが……………残念だ」
雲が流れ、再び月が現れると同時に銃声が鳴り響く。
が、弾は宙を舞った。
男の手から離れたハンドガンも宙を舞った。
女の背から突如現れた醜い片翼がそれらをはね除けたのだ。
そして、それはスローモーションのように両者の眼に映り、再び現実に戻る。
振り返った女に一発二発三発と、男の殴りが入り、それを女は翼で受け止めた。
首を背け、最後の回し蹴りを間一髪のところで回避する。
男は丁度落ちてきたハンドガンを取り、女へ向けた。
「…諦めろ」
少しの沈黙の後、女は両手を静かに上げた。
「それが身のためだ…渡せ」
片手に握られたそれは空を切って男への手中へと収まる。
男はそれを指で転がし確認すると、胸ポケットへと仕舞った。
『…もうアンブレラは存在しない…誰があなたを雇っているの?』
「さぁな……もう行け、そして、二度と関わるな」
女は両手を上げたまま後ろを向き、歩き出す。
皮膚を突き破った左翼が徐々に縮み、背中の筋肉へと戻っていく。
それを見て、男は呟いた。
「…お前は背負いすぎた」
その言葉に女の足が止まる。
少しだけ後ろを見て、瞼を閉じた。
『背負わされたのよ』
そう言って、女は暗闇へと消えていった。


小型通信機の電子音が響く。
女はそれを手に取って耳にあてた。
『…エイダ、何も分からなかった…』
「そう…それなら、こちらでなんとかするわ。それより、向かってほしい場所があるの」
『どこ?』
「………村よ」