雷雨’s blog

現実を書こう!

ONE PIECE 25周年記念夢小説 続(5) サー・クロコダイル(×)

※タイトルはサー・クロコダイルですが、今回の話には登場しません。今回はハンニャバル(微甘)になります。

 

一目見た瞬間に
まるで雷鳴のように


🏴‍☠️篠突く雨😈


あれから1週間が経ち、クロコダイル含めバロックワークスの面々は尋問の為、海軍本部へ一時的に収監された。
インペルダウンへの就職を希望した雷雨はついにその地へ足を踏み入れ、不気味な面子に出会うのであった。

「今日から、よろしくお願いいたしますね、雷雨さん」

更衣室で制服に着替えていると、不意に背後から声をかけられ、渋々会釈をする。
(…この人は確か…)

「よろしくお願いいたします、ドミノさん」

副看守長のドミノその人であった。
彼女は若そうに見えるが、実際の年齢は聞いたことがない。
後々聞くことも億劫だし、興味もない。
ただ、どこか切れ者のように感じるし、若いと油断すれば痛い目をみそうだ。

「今日からあなたの研修に副署長が付くそうです」

「副署長が!?ですか?」

「ええ。挨拶はまだでした?」

「まぁ、はい…」

「それなら丁度良かったですね」とドミノは笑って、更衣室を出ていった。
(あの人、笑うんだ…)
雷雨は少し呆気にとられながらも、懐中時計に目をやって、遅刻ギリギリの時刻に焦りながらドミノの後を追うように更衣室を後にした。

「ここで待つように」と指示をされた部屋の椅子にぽつんと一人座り、目の前のテーブルに置かれたマニュアルであろう書類にパラパラと目を通す。
マニュアルにしてはとても分厚く、数日で覚えられるような内容ではないことは明白であった。
柱時計の振り子の音だけが部屋に響き、とても居心地が悪い。
約束の時間もとうに過ぎている。
(副署長っていい加減な人なんじゃ…)と雷雨が溜め息をついたと同時に、扉がガチャリと音をたてて開いた。
驚いたように雷雨が立ち上がると、ヌッと現れたのは3mは超えているであろう長身の人物。

「いやぁ、悪い悪い、遅れてしまった。ようこそ、我がインペルダウンへ!…おっと、本音が出ちゃった…署長には内緒でお願いスマッシュ!」

「…」

男は入ってくるや否や、独り言のようにペラペラと喋りだし、雷雨を見ずに黒板にチョークで自身の名前を書き出す。

「私はこのインペルダウンの副署長、ハンニャバルだ!よろしっ…!!」

ハンニャバルは言い終わる前に雷雨の姿を見て、瞬きも忘れたように固まった。
その様子に雷雨も「何が起きた」と固まる。
数秒の沈黙の後、雷雨が「あのー、よろしくお願いいたしますね、副署長」と言うと、我に返ったハンニャバルは「あ、ああ!よろしく!」と慌てて返事をした。
何か彼の顔が少し変なような気もしたが、雷雨は特段気にはしなかった。
が、彼のほうは違ったようで。

「え、えーと!では、まずはマニュアルについてなんですが…あ、あれ?渡してたっけ?」

「はい、既にここにあります」

「そっかー!」と汗を1つ拭って、ハンニャバルは誤魔化すように笑った。
唾を飲み込み、雷雨のほうへと近づいてマニュアルを指差す。

「ちょっ、ちょっと貸してもらっても?」

「はい、どうぞ」

火照った顔を隠すようにマニュアルをガン見して、ハンニャバルは目を泳がせていた。
彼の脳内で描いていた研修の内容が消え失せ、焦りの色が出始めると共に、久しぶりの感情に振り回されている自身への困惑ぶりに本人もどうしたら良いのか分からない状態、つまり、パニックに陥っていた。

「こ、これはね!」

と教えようとした矢先、彼が持っていたマニュアルが真っ二つに破れた。
バラバラに舞い落ちる紙を見て、雷雨は(何が起こった)と彼に視線を移す。
目が合ってしまったハンニャバルは顔を真っ赤に染めながら、手元に残った紙をばら蒔くように放り投げた。

「これはいらーん!マニュアルなんていらない お仕事になりマッシュ!」

「…はぁ。」

「私に常に付いてくれば分かる!今から研修がてら監獄内を案内スマッシュ」

(変な人)と雷雨は冷静に彼を見た。
先が思いやられるというか、こんな人が副署長なんだと彼女の中で失望に似た感情が沸き上がる。
だが、それと同時に好奇心も現れ、ハンニャバルへ興味を持ったのも確かであった。

「副署長!ちょっと足速いです、もう少しゆっくり歩いてくれませんか?」

「あ、ああ。何かあればいつでも言って!そして、ハンニャバルと呼んで!」

特に返事もしない雷雨にハンニャバルは「あ!本音出ちゃった」と照れ笑いをして、スタスタと先を歩いて行く彼女に「待って!私が案内してるから!」と慌てて追いかけるのであった。


彼ら、もとい、インペルダウンに一騒動が起きるのは、それから数日後の話で。
雷雨にとってそれが悲劇になろうとは、まだ誰も知りはしなかった。


TO BE CONTINUED