雷雨’s blog

現実を書こう!

ONE PIECE 25周年記念夢小説 続(3) サー・クロコダイル(無)

お前ェを見てると虫酸が走る
…思い出したくもねェことを思い出す


🏴‍☠️雨垂れ石を穿🐊


1日2日と経過し、3日目の朝を迎えた雷雨は一人中庭にいた。
今日中に結果を出さなければ用済みになる約束だ。
空を見上げ、そっと右腕の腕輪を外す。
重たい音をたてて腕輪が地面に落ちると同時に、どす黒い雨雲が集まりだした。
ポツリと雨が降り始めて、雷雨は目を閉じ神経を研ぎ澄ます。
そこへミス・オールサンデーが音もたてずにやってきて、不安そうな面持ちで雷雨を見た。
(…信じてるわよ)
心の中でそう願わずにはいられなかった。
雷雨は冷たい暗闇に目を開く。
精神に存在するもう1つの世界で、雨がスローモーションのように、波紋をたてて落ちた。
これを止める絵を想像し、頭の中に留め続ける。
右腕を空へ伸ばし、掌を広げタイミングを見計らった。
(ここだっ!!)
現実で目を開いた雷雨の手に力がこもる。
右手がピリッと静電気のような衝撃を受けて痛みを伴うと、周りに落ちる雨がどしゃ降りへと変わった。
「…っ」
雨を止めるつもりが、それとは正反対の現象に彼女の顔が曇る。
ずっと同じことがここ数日起きていた。
何が間違いの原因かも、彼女には分からない。
オールサンデーはそんな彼女を見て、1つの考えを持っていた。
【クロコダイルが来る前に彼女を逃がす】
それには彼女を説得する必要があった。
だが、頑固な彼女を動かすにはそれなりの理由が必要で、死を提示することは無駄だと数日前に知った。
クロコダイルは夜に様子を見に来ると言っていたことを思い出したオールサンデーは、それまでにはどうにかして彼女を逃がすことを固く誓っていた。
「もう一度やりなさい」
相応の理由を考えながら、最後まで諦めるなと彼女に諭す。
雷雨も雷雨で、それを知ってか苦悶の表情を浮かべた。
何度も何度も挑戦しては失敗を繰り返し、食事をすることを忘れ、時間はあっという間に過ぎて辺りに夕日が差し始める。
オールサンデーもここまでと言うように、雷雨の肩に手を置いた。

「…去りなさい、あなたには無理よ。クロコダイルに殺されようとそれは勝手だけど、死体の処理をするのは私なの…手を煩わせないでくれる?」
「…」

敢えて突き放すような言い方で、且、迷惑だと遠回しに伝える。
恩を感じている彼女ならば、迷惑をかけるような真似はしないだろうと踏んでだ。
そんなオールサンデーの気持ちを汲むように、雷雨はコクりと頷いた。
少し寂しそうに俯いて、その場に落ちていた腕輪を拾い上げる。
「それは餞別よ、持っていきなさい」
雷雨はそれを右腕につけようとして、耳元で鳴った音にびくりと顔をあげた。

「…誰が生かして逃がすかよォ?」

「!!!クロコダイル!!!」

オールサンデーが叫ぶと同時に、二人の間に割って入るように砂が蠢き出す。
咄嗟に後退りする雷雨の足が縺れ、後ろへ倒れるように体勢が崩れた。
それを逃がすまいと砂が彼女の首目掛けて飛び始める。

「やめてえええっっっ!!!」

オールサンデーが叫びながら自身の能力を行使しようとした時、それは起こった。

「!!!」

砂から形を変えたクロコダイルの手を何かが止めている。
それは雷のように轟音をたて続けて、冷たく重い。
何が起きたか分からないクロコダイルは、自身の手に切り傷が出来て初めて驚いたように手を引いた。

「…こいつァなんだ」

尻餅をついて顔を両手で覆った雷雨とクロコダイルの間に滝よりも激しく速く落ち続ける雨水が壁のように二人を隔てている。
それを見たオールサンデーは「…まさか」と雷雨に目をやった。
ついに彼女が能力を行使したのか、偶然か。
だが、どちらでも良い。
なぜなら、これで彼女は用済みにはならないのだから。
(…荒療治が一番だったようね)
安堵したオールサンデーを他所に、雷雨は怯えながら、目の前の雨水の壁を見た。
信じられないといったように自身の震える両手に視線を落とす。
その様子にクロコダイルは溜め息を吐くように葉巻をふかせた。
「おい」
驚いて顔をあげる雷雨に、クロコダイルは続ける。
「てめェに期待はしていなかったが…約束は守る。寿命が延びて良かったな…」
皮肉のように吐き捨てると、「役に立て」と付け加えて、クロコダイルはアジトへと戻っていった。
それを呆然と眺めていた雷雨は我にかえって、緊張を拭えないまま少し嬉しそうな笑みを浮かべ、右手を空へ伸ばした。
雨は瞬時に止み、青空に虹がかかる。
それを見てオールサンデーは堪らず微笑んだ。
「これからもよろしくね、雷雨」


ここからクロコダイル率いるバロックワークスの計画が始動するのだが、その数年後にあと一歩のところで夢破れるのである。

ぽっと出のルーキーである麦わらのルフィの手によって。


TO BE CONTINUED