雷雨’s blog

現実を書こう!

ALIEN夢小説/エイリアン・ウォーリアー(狂)

真っ黒だ。
全てが黒に染まり、ただ溺れ落ちてゆく。


:Desire to control:


光沢を帯びる尾が目の前をうねる。
何処までも続くようなそれは、何時しか身体を這っていた。
尾の先端は尖り、針を連想させる。
触れただけで皮膚が切れそうな予感がした。
その尾は身体に巻き付くと、少し力が入り、キツくなる。
思わず呻き声を上げれば、尾の主が後ろへと引っ張った。
力敵わず、背が甲羅のようなものに当たる。
その後ろは壁のようで、それ以上は後ろへと行かないようだ。
反動で座るような形になると、その甲羅のような固いものに全体重を掛けざるを得ない。
体温は感じられないが、荒い息遣いだけは耳元で生温さを伝えた。
両脇に置かれた黒に近い足のようなもの。
肩の上に置かれるように通された二本の腕のようなもの。
それらは視界の中で不気味に蠢いた。
自らの鼓動が速まるのを感じながら、何も出来ず、真っ直ぐ前だけを見つめる。
二本の腕が首に回ると、口が渇いているにも関わらず唾を呑み込んだ。
その振動が伝わったのか、後ろのそれは喉を鳴らす。
視界の左にゆっくりと姿を現す何か。
横長の形状をしているそれは、眼球を持ち合わせてはいなかった。
ただ歯を鳴らし、奥にある恐怖をちらつかせる。
身体に巻き付いている尾の力が増し、骨が軋んだ。
後ろを振り向くように身体を回転させられ、その姿をハッキリと捉える。
美しいと思ってしまうのは、きっと感覚が麻痺してしまったせいだろう。
目の前のそれは弄ぶかのように尾の先で両頬を触った。
力加減を誤ったのか、赤い血が滴り落ちる。
驚いたように大きな口を開け、小さな切り傷を指のようなものでなぞり始めた。
意識が朦朧とする中、その光景をただ眺めていることしか出来ない。
視界がだんだん黒に染まってゆくと、後頭部が長い顔のようなものが触れそうな程近くなっていた。
それは口の奥にある恐怖を植え付けることを意味している。
ただそれを待つしかないのだが、それは一向に訪れず、自らの意識を手放した。


気付けば、最初と同じように背を固い皮膚に預けている。
生きている感覚が不思議だった。
胸の違和感もない。
何も植え付けられてはいなかった。
後ろのそれは、規則的に吐息をたて、獲物は逃げられないと安心したかのように眠っているようだ。
身体には巻き付いた尾の他に、二本の腕が通されている。
一本は首に通され、もう一本は腰を回っていた。
身動きが一切とれない。
よく見れば、左肩には顔が乗せられていた。
唯一動く両足の膝を立てると、それを察知したのか、黒い両足の間隔が狭められる。
涙すら出ないのは、もう死を悟っているからか。
それとも―。


結局、それは絶望をもたらすだけもたらし、息の根を止めてはくれなかった。
仲間だけが死に、独り。
肌に触れ、広がってゆく黒いそれを受け入れる。
それだけでもう救われた気がしたのだ。
もう何もない。
どこまでも続く闇にただ溺れ落ちてゆく。
息苦しさを感じながら、心も身体も痛みを忘れ始める。
そして、心体を委ねると、考えることを止めた。