雷雨’s blog

現実を書こう!

A Plague Tale: Innocence/年越し夢小説/オリジナル(切)

病が君と僕を別つなら、
僕は哀しみ一つ遺さず、思い出と共に消えてしまおう。


† Life left behind †


いつも見る彼女の姿。
今日も彼女は、僕の家の扉を叩く。
『遊ぼうよ』
と君は笑顔を浮かべていた。
生まれつき病弱な僕は、彼女の誘いを断ることも多かった。
けれど、彼女はほぼ毎日、僕を遊びに誘い続ける。
彼女は、友達が多かった。
だけど、僕のせいで彼女は独りになった。
だから、せめて、僕は彼女を幸せにしなきゃ。
そんな使命感に駆られていたある日。
傍で鼠が鳴いた。


いつも見る彼の姿。
今日も彼は二階の窓から私を見下ろす。
「今日は遊べない」
と残念そうに、あなたは呟く。
私達は幼馴染みで、私は彼のことが好きだった。
けれど、彼とはあまり会うことはできない。
彼は独りだった。
だけど、私がいれば独りじゃない。
だから、私は彼から離れるわけにはいかない。
そんなことを思っていたある日。
奇病の噂を耳にした。


『遊ぼうよ』


彼の声は聞こえない。


『会いたいよ』


1年が終わる日。

私はまた彼の家の扉を叩く。

「そこにもう人はいないよ」

近隣の住人がそう言った。

『どうして?』

黒死病の話は聞いてるだろ、そこの坊っちゃんも鼠に噛まれたんだ」



夜になっても、私はその場から動くことができず。

雪が降るのをただ眺めていた。


『…遊ぼうよ』


彼との1年が終わる。